大英博物館が、葛飾北斎の幻の挿絵作品103点を所蔵に!今ならオンラインでも公開中。
葛飾北斎の未発表の素描(デッサン/ドローイング)103点がフランスで見つかり、2019年6月イギリスの大英博物館が購入。2020年の現在オンライン・コレクションで公開されていますが、今後は展示も予定されています。世界的に高く評価されている、日本を代表する浮世絵師、葛飾北斎(1760-1849)の「失われた作品」が再び鑑賞できることになりました。
これらの作品は、未完となってしまった『万物絵本大全図(ばんぶつえほんたいぜんず)』という本の挿絵として1829年に70歳の北斎が制作したもので、代表作「富嶽三十六景」を手掛ける直前のもの。
(下は、大英博物館が取得したニュースを伝える美術手帳の記事)
1948年まではフランスのコレクター、アンリ・ヴェヴェールが所有。1948年オークションに出品されて、その後はパリの個人コレクション所蔵となっていましたが、2019年発見されたのを大英博物館がイギリスの慈善団体「アート・ファンド」の支援を得て購入しました。
1820年代後半の北斎は、1827年頃脳卒中で倒れたり(その後回復)、1828年に二番目の妻を亡くしたり、また1830年の手紙に書かれているように貧困に近い状態に陥っていたなど困難な試練に直面し、制作活動が一時的に停滞していたとされている時期で、作品もあまりみつかっていません。(この時期はまた、北斎の娘で画家として成功していた英祖が、離婚後に父の元に戻ってきた時期であったとも言われています。)
今回の作品は、この時期に北斎が人生の転機を迎えながらも新しい制作段階に入っていたことを示しており、その発見はとても意義があります。
大英博物館は、日本国外では北斎作品を世界で最も多く所蔵し、絵画、版画、素描、絵本など1000点以上がありますが、今回のこの作品群についてハートウィグ・フィッシャー館長は、「150年以上におよぶ北斎コレクションのなかでも画期的なもの」とコメント。
ティム・クラーク名誉研究員も「これらの作品は、彼の人生と仕事の重要な時期にアーティストの活動についての私たちの知識をかなり拡大する大きな、新たな発見だ。全103点の作品は北斎の後期作品に見られる幻想的な世界観と創作、そして筆の技術によって表現されており、彼の作品が世界中の多くの愛好家の目に触れることができるのは素晴らしい」と話しています。
作品に描かれているのは、神話などに基づくもの、物語の人物、動物、鳥、花や風景などの自然で、驚くほど幅広いテーマに基づくもの。副題には「インド、中国」とあり、テーマは中国、東南アジア、インド、さらに西の土地に関連したものが中心です。これ以前の作品の中にも同じようなテーマのものがありますが、ほとんどが全く新しいものです。尚、裏面に鉛筆で書かれたナンバリングがありますが、ランダムに書かれたと考えられています。
そして序文には、「吉野山」と富士山が三段に描かれた印が押されています。これらの印鑑の鑑定にはさらに研究が必要ですが、吉野山の印鑑は、図鑑『北斎図式』の奥付に印刷されている印鑑と同じものを手で押したもの、富士山は、『絵本さきがけ』第1巻の奥付に印刷されている印鑑と同じものを手で押したものとみられます。
作品の筆致も、「北斎漫画」を始めとする北斎作品と同様の素晴らしい筆さばきが随所に見られ、浮世絵ファンや北斎ファンは必見の作品群です。
大英博物館のオンライン・コレクションを見るなら、下記から、どうぞ。
(大英博物館HPのコレクション・ページ)
また作品はクリエイティブ・コモンズライセンス4.0の下で公開。画面下の「Use this image(この画像を使用する)」をクリックすると、非商用利用に限って無料で画像をダウンロードできるという粋な計らいです。
来年(2021年)以降、もしロンドンに行く機会があれば、大英博物館の展示情報に注目しましょう。これらの作品を実際に見ることができるかもしれませんよ。