世界の漫画論が見えてくる!大英博物館の「マンガ展」、いつまで開催?その評価・評判は?
大英博物館で「The Citi exhibition Manga マンガ」という、日本のまんが文化(漫画文化)の展覧会が、2019年5月23日から8月26日まで開催されています。海外では最大級の規模で、大英博物館の中でも最高の特別展示スペース「セインズベリー・エキシビションズ・ギャラリー」が会場。
2019年ラグビー・ワールドカップと2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の橋渡し役という形で開かれている「日英文化季間2019-20」の一環で、約50人の漫画家による約70作品、約240点の原画が展示されています。
(例えば、「鉄腕アトム」「ドラゴンボール」「ONE PIECE」「ポーの一族」「海月姫」「美少女戦士セーラームーン」「キャプテン翼」「ポケットモンスター」などなど)
主催は大英博物館、国立新美術館と一般社団法人マンガ・アニメ展示促進機構が共催となっています。
博物館での展示なので、美術館とは違って、社会的・文化的な背景や作品制作に関することなども展示されているのが特徴。
そのため、鳥獣戯画や北斎漫画にまでさかのぼって漫画の歴史をひもといていたり、漫画の読み方が解説されていたり、重要な役割を果たす編集者のインタビュー映像や編集部の仕事を解説する映像の展示、神保町(東京)の漫画専門店「高岡書店」の写真、さらにはマンガが並ぶ書棚の実物展示や、キャラクターに似せた衣装を着て楽しむコスプレ、そしてイベント「世界コスプレサミット」の映像などもあり、マンガ文化をさまざまな視点から学び、実感・体験できるようになっています。
入場料は、19.5ポンド。(約2800円)
それら展示資料は、日本から提供されたものだけでなく、チーフ・キュレーターのニコル・クーリッジ・ルーマニエール教授(東大で客員教授も務めたことがある)を中心としたチームが実際に日本に来て、撮影したり収集したりしたものも多くあります。日本では当然と思われ、特に記録・保存などされてこなかったことなどもあって、日本から見てもとても貴重な資料もあるようです。
<会場の構成>
ゾーン1「The art of manga(漫画という芸術)」
ゾーン2「Drawing on the past(過去から学ぶ)」
ゾーン3「A manga for everyone(全ての人に漫画を)」
ゾーン4「Power of manga(漫画の力)」
ゾーン5「Power of line(漫画家が描く線の力)」
ゾーン6「Manga: no limits(広がる漫画の世界)」
大英博物館発表では、前売り券の売れ行きは、過去5年の特別展の中でも最高で、週末の予約は売切れ近いとのこと。また16歳以下の割合が約23%と、通常の特別展より高くなっているという特徴もあるそうです。
ただマスコミなどの評価は賛否両論いろいろあり、この展示に困惑している様子がうかがえます。
"展覧会という手法がマンガにとって最良だったのかは、疑問がある。・・・でもこの展覧会がきっかけとなって、足を運んだ人が、マンガにもっと興味を持つようになったのなら、それは意義があったと言えるだろう。"(『Time Out』 https://www.timeout.com/london/museums/manga-review)
"大英博物館は古代世界の遺物や啓蒙運動時代からの彫刻、ローマ帝国時代のコインなどの展示で知られています。マンガのルーツは19世紀なのに、あまりにも軽薄で現代的過ぎて、古代ギリシア・アテナイの諸彫刻の隣に展示されるには賞味期間が短すぎるのでしょうか。あるいは、大英博物館がこの度、100年以上にわたって現代文化に貢献してきたと認めて展覧会を行っているように、本当に価値があるもので、これからも現代文化に貢献していくのでしょうか。私は、そうだと信じています。"(『The Guardian』 https://www.theguardian.com/commentisfree/2019/may/23/manga-british-museum-elgin-marbles)
世界的に見ると、ワンピースが4億5000万部、ドラゴンボールが3億部、ナルトが2億3500万部売れていて、世界各国で多くのマンガが映画にもなって人気があることを考えると、マンガは、もはや見逃すことのできない世界的現象。これが文化と言えるのか、今回の大英博物館の展示が本当に意義のあるものだったのかどうかなどは、今後、評価が決まってくることかもしれません。
▼この記事もおもしろいですよ!
BBCのニュース「世界は漫画を通して日本を見ているのか」
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48618569
▼大英博物館については、こちらもどうぞ!
>> ロンドンミュージアム:大英博物館の行き方と、見どころ、周辺のおすすめ
◆「日英文化季間2019-20」の外務省のHP(ここを、クリック!)から、全イベント(アートや音楽、映画、展覧会、スポーツ、ビジネス関連のイベントなど)が分かります。(HPの「Event」をクリック)
尚ロンドンなどイギリスで開催されるだけでなく、日本でも、英コートールド美術館所有のマネやセザンヌらの傑作群が、2019年秋には日本(東京・愛知・神戸)で展示されるなどのイベントがあります。